第221章 愛憐
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私と同じ感覚をきっとリヴァイさんもハンジさんも味わったのかもしれない。木槌の鳴らすカン、カン、カン、という音がやんでいた。
「ハンジさん!!」
ハンジさんを呼ぶと、やはり真っ青な顔でハンジさんは振り返った。
「――――ナナ……、今のは……まさか……エレンが世界を……。」
「……っはい、おそらく私もそう……思って……。」
ハンジさんの目線は私を通り過ぎて、更に大きく開かれた。
「――――リヴァイ!!」
「えっ?!」
慌てて振り返ると、到底起きられるような怪我じゃないはずなのに、リヴァイさんが上体を起こしている。
「リヴァイさん!駄目です、起きちゃ……!」
「……ハンジ……、獣の……クソ…野郎は……どこだ……。」
リヴァイさんの悔しさはいかほどだろうか……。それはわかる。でも、今は僅かな無茶が命取りになってしまうことだってある。傷の処置をしていたときよりも今頃になって、私の心臓はどくんどくんと忙しく収縮した。
お願いだから、無茶はしないで……もう少しちゃんと回復するまでは……。
そう思って横になれるように肩と背中を支えても、リヴァイさんはハンジさんの方を見たまま動いてくれない。
「ナナの言う通りだよリヴァイ、起きなくていい。とにかく安静にして……。」
「…………。」
ハンジさんの言葉に、リヴァイさんはやっと私の腕に身体を少し預けてくれた。
身長は私とあまり変わらないはずなのに、こうして見るとやっぱり分厚くて逞しい身体と、その重量に驚く。
――――あぁそうか、私は今まで守られて、支えられてばかりで……リヴァイさんの身体をこうして寝かせるために支えたことなんてなかった。
私が大怪我をしたとき……あなたは軽々と私を抱きあげて横たえて、布団をかけてくれた。
あんな風にできたらいいのに。
できるわけもなくて、いつまでも私はこの人に与えられてばかりなんだと……切なくなる。