第221章 愛憐
「決めるのはお前だ。お前が選べ。永久にここにいるのか、終わらせるかだ。」
『悔いが残らない方を自分で選べ。』
――――これも信頼する大事な存在が教えてくれたことだ。
俺を俺のまま尊重してくれる。
だから俺もこの、神に仕立て上げられ利用され続けた哀れな少女に問う。
自分の意志を。
「何をしている!!ユミル!!俺の命令に従え!!すべてのユミルの民から生殖能力を奪えと言っているんだ!!今すぐやれ!!ユミル!!」
大声で威圧的に叫ぶジークの声よりも、きっと今のユミルには……俺の声が、届いている。
「俺をここまで導いたのはお前なのか?」
「俺は王家の血を引く者だ!!!ユミル!!聞け!!」
「待っていたんだろ。ずっと。――――二千年前から、誰かを。」
そして初めてユミルは、振り向いて顔を上げた。
その目は涙に濡れていて……はっきりと、彼女の顔が見えた。神なんてとても思えない少女は……、悲しい、辛い、助けて……ずっとずっとその苦しい気持ちを表に出したことすらなかったのか、どういう顔をしていいか分からないように、ただ苦しそうに目をぎゅっと閉じて俺に頭を垂れた。
「――――終わらせよう、俺とお前で。」
破壊が始まる音は、壁が崩壊する音だった。
俺達を閉じ込めていた煩わしい壁……硬質化の力で巨人を並べて塗り固めた壁。
その硬質化を解くとまるでその時を待っていたかのように、超大型に匹敵するような大きさの巨人が数千体、世界を恐怖に陥れる足音を立ててその一歩を、踏み鳴らした。