第220章 覚醒
リヴァイさんの体温を感じると、また引き戻されるようだ。あの日々の熱情が蘇る。
あなたさえいてくれたら何もいらない。
世界が滅びようとも―――……ただ側にいたい。
ハンジさんが言ったみたいに、ここで3人でなにもかも放り出して、せめて安らかに過ごしたい。
――――でも、もうあの頃とは違う。
守るべきものが増えて、世界は変わって……私たちも、変わった。
だから私は……残酷でも、辛くても、愛しいこの人に鞭を打つように、起きろと言う。
最後まで一緒に戦おうと。
傷ついて戦い抜いたらまた、あの巣箱に戻ろう。
そして今度こそずっと、離れないから。
「――――目を開けて。リヴァイさん……。まだ私たちには、出来ることがある。」
私が彼を呼び起こすようにはっきりと発した言葉に、ハンジさんは驚いたのか私たちのほうへと振り返った。そしてひどく辛そうな顔をしてから、腹を括るように小さく頷いてまた木槌を鳴らし始めた。
――――さっきよりも、力強い音で。
「最後まで一緒がいい。見届けましょう。ねぇ、リヴァイさん。」
痛いだろう、苦しいだろう。
分かってる。
――――でもわかっていて、彼を辛い現実に繋ぎ止める私は……エルヴィンを解放してあげたリヴァイさんよりもどれほど酷い人間だろうか。
「……リヴァイさん……。」
もう目を開けなくてもいい。
ううんだめ、目を開けて。
そんなせめぎ合う心がまた私をぐらぐらと不安定にさせる。
視界が滲む。
そんな中、ゆっくりとリヴァイさんの黒く長い睫毛が持ち上がった。
その間から覗く黒い瞳がゆっくり動いて、私の方へ向く。