第220章 覚醒
「ジーク?!……お前……なのか……?!……大きくなったな……。」
「―――――………?!」
「すまない……私はひどい父親だった……お前にずっと……辛い思いをさせた。」
父さんはようやく息子を捕まえ、その腕に抱きしめた。
――――ジークはこの時を、どれほど……待ち続けていたのだろう。これは夢だと、現実じゃないと……受け止めきれていない表情で、ただ父さんに抱かれている。
「ジーク……お前を愛している。――――もっと……一緒に遊んでやればよかったのに……。」
――――その言葉はまるで呪縛を解くようなものだっただろう、彼にとっては。
「……父さん。」
「ジーク……エレンを……止めてくれ。」
感動の親子の再会と蟠りも解けて良かったじゃないか。そう、思ったところでその記憶の旅から強制的に弾き出された。
記憶の旅から再び始祖ユミルのいる空間に戻った途端、ジークは全てを理解した。
「お前が……父さんを……壁の王や……世界と戦うように仕向けた……のか?」
「感謝してるよ兄さん。あんたが俺を父さんの記憶に連れ込んだおかげで今の道がある。」
ジークは感付いた。俺がしようとしていることを。
「……俺の望みではなく、お前の望みが叶うって……言っていたぞ。」
「……ああ。」
「―――――始祖ユミル!!すべてのユミルの民から生殖能力を奪え!!」
「!!」
「グリシャは……俺にこう言った……。エレンを止めてくれと。お前に従ったことを後悔していた。」
始祖ユミルがジークの……王家の主人の命に従おうと、座標の方へと歩き出す。そこに触れられたら……終わる。エルディア人の安楽死が実現してしまうかもしれない。なら例え俺が世界を滅ぼしたところで……共倒れになるだけだ。
ユミルを止めに行きたくても、俺の両手は鎖に繋がれたまま……いくら足掻いても、外れそうにない。
「ぁぁあああ!!」
手錠から抜け出すために自らの手の肉を削ぎ落とし、骨を歪ませて無理矢理そこから抜け出る。座標に向かうユミルを、止める。絶対に。
「無駄だエレン……。一度動き出した始祖ユミルを止めることなど、この世の誰にも出来ない。」