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【進撃の巨人】片翼のきみと

第220章 覚醒





そしてまた俺はあの日に、いた。

壁が破られ、母さんを目の前で失ったあの日に。



王都に診療に出かける前、父さんはガキの頃の俺に『帰ったら地下室を見せてやる。』と言い残して家を出た。これから残酷な運命の歯車を回すために。

父さんは過去の記憶で見た通り、レイス家の礼拝堂へ向かう。始祖の巨人を宿すフリーダを説得し、壁に攻めて来た超大型や鎧と戦えと、民を守ることを説得しようと試みる。けれど、不戦の契りに縛られたフリーダは当たり前にそれを拒否し、世界の怒りを受け入れエルディア人が滅びることを望んだ。





『進撃の巨人は未来の継承者の記憶をも覗き見ることができる……つまり未来を知ることが可能なのだ。私はここで始祖を食らい、王家の血をここで絶やす。………そういう未来だと、決まっている。』





そう、未来は決まっている。

変えられない。

導かれるままその結末へ向かうために一つずつ、小さな部品が組み上がって歯車が回り始める。父さんは自らをいきり立たせて自分の手にメスを突き立てようとした。巨人化して……始祖を、フリーダを食らい、その弟や妹……幼い命を絶つために。



だが父さんは優しすぎたんだ。



膝から崩れ落ちて、うなだれた。





『できない……。私に……子供を殺すなど……私は……人を救う……医者だ……。』





その宿命から逃れたいのか、父さんは情けない顔でただへたり込み震えている。





「……馬鹿な……グリシャは確かに始祖を奪い……この一家を虐殺した……はずだ……過去が変わる……わけが……ない。」





ジークは父のその姿を見て呆然としていた。

そうだ、父さんは殺せなかった。









――――だから今、俺がここに来たんだ。









俺がここに来なければ父さんは――――……、あの蛮行を成しえなかったに違いない。









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