第220章 覚醒
「始祖ユミル。俺に力を貸してくれ。」
その少女に手を差し伸べた。
――――だが、始祖ユミルは俺の横を通り過ぎて……まるで主人の元へ向かうように、ジークの側まで向かっていく。
「やっぱりかよ。エレン……。――――お前だけは……わかってくれると……信じたかった……。」
疑っていた、俺のことを。ジークもまた。
「これもあの父親に洗脳されたせいなのか?」
ジークの側に寄った始祖ユミルは……服従を示すように、両膝をついた。
「これは……どういうことだ……。」
「お前が目を覚ますまでの長い時間で……俺は多くを学んだ。始祖は何でも作れる。こんな土塊の鎖でも。王家の血を引く俺が求めればな。」
ジークはいとも簡単に繋がれていた数々の鎖を引きちぎって、立ち上がった。――――それは俺を油断させて本音を引き出すための、嘘だったのか。
「俺は歴代の壁の王と違い初代王の思想に染まらぬままここに到達した。そして木の遠くなる時間を始祖と共に過ごす中で……不戦の契りを無力化していくことに成功した。」
「………?!」
「絶大な力を持つ始祖ユミルだが、その正体は自分の意志を持たぬ奴隷だ。王家の血を引く者を自分の主人だと思い込み服従し続ける。」
ジークの元に跪くユミルは、ただの憐れな少女に見えた。
「始祖の力は、俺が手にした。」
「……馬鹿な……。」
「お前は鍵に過ぎなかったんだよ。エレン。」
ジークが指を指した瞬間、俺の両手は鎖に繋がれた。
側にはユミルが立っていて……ジークの命令のままに、俺を鎖で繋いだんだ。
「お前の本音を聞くまで待っていてよかった……。やはり……あの父親に洗脳されてしまっている。お前は悪くない。俺は決してお前を見捨てはしない。俺が……始祖の力でお前を治してやる。」
「―――――やめろ。無駄だ。」
「世界を救う時は、お前と一緒だ。」