第220章 覚醒
「俺とクサヴァーさんと……お前の夢だ。頼む……世界を……救ってくれ。」
あんなに用意周到で、緻密に計画を実行して来たあんたが……血の繋がっている弟だというだけで……、いや、『憎むべき父に同じように酷い目に遭わされた可哀想な弟』、それが大きいのだろう。
その存在だというだけで、俺を信じすぎた。
「………エレン?……始祖にこう伝えるんだ!全てのエルディア人を今後永久に子供を作れない体にしろと!地鳴らしで連合軍を潰すのはその後でいい!!」
――――安楽死。
安らかな、死。
それは本当に、幸せか?救いなのか?
「すべてのエルディア人を……安楽死させる。」
「……エレン。やってくれるのか。」
救いであるはずがない。
俺はミカサが……アルミンが……、ナナが、笑って生きられる未来を望む。大切な人と、大切に生きて命を繋いでいく未来を。
「こんなふざけた計画、俺は到底受け入れられない。悪いが兄さん。俺はここに来るためにあんたに話を合わせていただけだ。」
俺が俺の思惑を話すと、ジークはたった一人の身内に裏切られたことが辛いのか……自分の望みが叶わぬことが辛いのか……、絶望したような顔を俯かせた。
「あぁぁあ………。」
俺はユミルの力を借りて、壁の中の巨人を目覚めさせる。
そして……この世界から、俺達の自由を……未来を奪う奴は全員―――――踏みつぶす。
ユミルにその意志を伝えるため、一歩一歩と彼女に歩み寄る。
「エルディア人がいる限り……この地獄は終わらないんだぞ……。お前がここでやらなければ……この先もこの殺し合いは終わらない……俺達が繰り返してきたことがずっと続く……。なぜだ……エレン……答えてくれ。」
なぜ?そんなこと、一つしかないだろう。
ずっと俺は、俺のままだ。
「俺がこの世に生まれたからだ。」
俺の自由を、俺の愛する者達の自由を、誰にも渡さない。
俺達から奪うつもりなら――――、奪ってやる。