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【進撃の巨人】片翼のきみと

第2章 変化




「………その日はシガンシナ区の小さな病院に訪れていたの。いつものように、何の感情も持てないまま去ろうとした時、鳴り響く鐘が聞こえた。調査兵団の、壁外調査からの帰還だった。……彼らがどんな事をしているのか、詳しく知らなかった私は、何気なくその様子を見に行ったの。」

「……調査兵団………。」

「勇気ある者たちの凱旋は、胸を張って晴れやかに行われると思っていた。でも――――――――違った。」



顔面蒼白で廃人のような兵士たち。

腕がない者、足がない者。足しかない者………五体満足で帰還していたのは、数えるほどだった。百名以上の人数だったのではなかったのか。

一体、私たちは何を相手にしているのだろう………そして、王都の人間の危機感のなさはどうだ。敵の正体を知ろうとする彼らを嘲り、税金の無駄遣いだと罵る。爆発するほどの色々な感情が沸き起こり、涙が止まらなかったのを覚えている。

そう語って、母は自らの肩の震えを止めるように、両腕で自身の身体をギュッと押さえつけた。



「その時、馬車の荷台に横たわった男性が、声をあげて苦しみ出したの。……彼は右足を巨人に食われていた。」



私はハッとして、リグレットさんを見た。

リグレットさんは遠い目で、その当時に思いを馳せているようだった。



「私は何も考えないまま、彼の元に駆け寄っていた。病院まで放置すれば、死に至ると思ったから。急遽、今立ち寄ったばかりの小さな病院に彼を運び込むように言い、処置を行った。彼はなんとか一命をとりとめ、その安らかな寝息を聞いた時に……腰が抜けたの。震えが止まらなくて。」

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