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【進撃の巨人】片翼のきみと

第2章 変化




それから母はゆっくりと語り出した。



もともと商いをしていた両親の元で、医者になりたくて勉強に励んでいたそうだ。

同じ医学校で学んでいて、好意を寄せてくれたのが父だった。

母は父に友人以上の感情が抱けずにいたが、実家の商いが破綻し、借金の肩代わりを申し出た父と結婚したこと。



そして、皮肉なことに大病院の院長夫人となって初めて、王都の貴族や裕福な人々にだけ提供される十分すぎる医療と、王都外の地区でまともな医療を受けられずに死んでいく人々の格差を目の当たりにした。

何か行動したい。貧富の関係なく、必要な人に必要な医療を提供できる世の中にしたい。

そう父に訴えたが、理解を得るどころか、医療の現場に女は要らない、院長夫人という飾りとしていれば良いと言われ、屋敷から出ることも許されず、屋敷の中でゆっくりと絶望していったのだ。



職務の一環として母に任されたのは、形ばかりの視察と慰問だった。王都外の困窮した医療機関に訪問しては、患者たちに声をかけてまわり、医師たちには「共に頑張りましょう」と、思ってもいない言葉とともにささやかな寄付をしていく。

王都の院長夫人が直々に訪れることで、より印象を良くしておこうと言うのだろう。

それが更に母を苦しめた。

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