第219章 影
――――驚きだよ、まさか僕がこんなクサい事を言う日が来るとは。
でも、大事だから。
守りたいから。
姉さんがいない分、あの子のことは僕がちゃんと守るから。
「――――はい!!」
「ありがとう、ロイさん……!」
「御礼はいいよ。僕の我儘でごめんね。よし、じゃ、さっさと片付けてみんな帰ろう。」
「はい!」
僕が研究用具等々を片付けようと手を出すと、エミリーがその手を遮った。
「どうしたの?」
「私がやっとく。――――今すぐ駆けつけたいんでしょう?先に、行って?」
「いや、いいよ。」
「えっでも……。」
「君も大事なんだから、こんな時に1人残して先に帰れないよ。わかれよ、馬鹿。」
「…………。」
僕の言葉にエミリーは真っ赤になって目を泳がせている。
そしてガチャガチャと騒がしかったはずの周りが一気に静まり返った。なんだよこの空気。あ、もしかして気を遣ってくれてる?
「え?なに今のこれキスするとこ?」
そういう空気なの?と周りのみんなに尋ねてみると、みんなは赤面しながら僕の問を大きな声で否定した。
「いや!!それは帰ってからどうぞ!!」
「片付けましょう!!早く!!」
「エミリーさんも、まんざらでもない顔しないでください!!」
「ロイさん、怖いくらい頭いいのにズレてるんだよなぁもう!」
みんなの反応に、エミリーがあはは!!と大きな口を開けて爛漫に笑う。
そうすると、僕も笑う。
そして、みんなも。
――――あぁ、僕はこの人たちが、大事なんだろう。
ねぇマスター。
また、そこに行くよ。
聞いてくれる?
僕の好きなものが――――、増えたこと。