第219章 影
ガリ、ガリと鎧のうなじを齧り続けるファルコが、ピクリと遠くに目をやった。
その先には……血に塗れた、顎の中身……ガリアードだ。
ファルコにわざと食われるために顎から出て来た。
その覚悟と……戦い続けて来たことへの誇りが奴の表情からも……読み取れる。
人間を食う習性のあるファルコは、途端に鎧には目を向けずに、手軽に喰える人間のガリアードをまるで菓子でも喰らうように、バキ、ボキ、ぐちゃ、と音を立てて咀嚼したのち、飲み込んだ。
仲間が食われるところを間近で見て今お前はどう思ってる?
なぁ、ライナー。
「オォォォオオオ!!!」
怒りに任せて鎧は雄たけびをあげ、項まで貫こうと俺の口の中を目がけて拳を突き入れた。
――――が、それが好都合だ。
そのまま鎧の拳を取り込んで硬質化し、そこに繋ぎ止めたまま俺は巨人の体を放棄。人として抜け出して、ジークの元へ駆ける。
獣の巨人の体が蒸発しきったそこには、ジークの姿があった。
「よく気付いてくれた……。死んだフリ作戦は大成功。あと少しだ……来い、エレン。」
「オォォォオオオオ!!」
あと本の十数mのところで、尋常じゃない鎧の咆哮に振り返ると……硬質化で繋ぎ止めたはずの奴は、よほどの執念かその硬質化を破壊して俺に手を伸ばした。
「エレン!!」