第219章 影
“コルト……。弟を想う気持ちは……よくわかる……”
「……ジークさん。」
“だから、……残念だ。”
そう一言無慈悲に残して、獣の巨人はまさに獣らしくその雄たけびを上げた。
”オォォォォオオオオオオ!!!”
「ファルコ!!」
その名を呼んでファルコに手を伸ばすのは……ガビだ。
ファルコが守りたかったガキ。
なぁファルコ。
気休めにもならねぇが、安心しろよ。
ここでお前が巨人化することも……この後慕っていた先輩戦士を喰らうことも……全て決められた未来に辿り着くまでの、一つに過ぎない。
ファルコの面影を残したままそこに出現した巨人は……ジークの命令により、鎧に襲いかかった。
尋常じゃない俊敏さと力だ。
ジークは生み出した巨人の能力値までイジることができるらしい。ファルコはジークの言う通りに鎧に纏わりつき、そのうなじをかみ砕こうと狙っている。
そのおかげで俺はなんとか鎧の下から這い出ることができた。あと数十m……ジークに近付こうとした時、倒れ込んだジークの項に向かってまた……一閃の光が走った。
壁の上から車力に再び……撃ち抜かれたんだ。
死んだ……?
いや、そんなはずはない。そんなシナリオじゃない。
獣の巨体から蒸気が噴出し、その肉が “道” へと還っていく。そんな蒸気の中で、小さな人間の姿を見た。これは死んだんじゃない。
ジークが死んだと見せかけて油断を誘おうとしているのだろうと理解した。