第218章 再戦
「動かないで。ガビも静かに。」
「……ピークさん!!」
「静かに。」
「君が、エレン・イェーガーで……合ってる……よね?」
静かな目で俺に銃を向ける女を、ガビがピークさん、と敬意を込めて呼んだ。この壁内どころか、こんな中枢までバレずに潜伏していた能力からマーレの中でも力のある兵士。
そして、その名前はマーレに潜伏している時にも何度も聞いた、 “車力の巨人” だ。
人型の時に初めて見たが……物静かで、小柄で長い黒髪を束ねているどこにでもいそうな女だ。
俺を脅すつもりかもしれないが……それは無理な話だろう。
「エレン、ポケットから手を出して。」
「従わなければどうなる?」
「引き金を引く。あなたの脳みそが床に散らばる。見たことない?巨人になる暇なんてないよ。」
「それで……?まだ撃たないのか?今引き金を引かないなら何しにここに来た?手をポケットに入れたままだとどうなる?」
「どうなるか君は知ることはできない。床に散らばった後じゃ――――……。」
「いやわかる。あんたは撃たない。」
――――可哀想にな。
どいつもこいつも不自由だ。こいつらは皆……収容区に家族がいて……大事なものを守るために戦っている。俺を殺せない。こいつは。俺はそう確信した。
「始祖の巨人を殺すことは許可されてない。命令は必ず始祖を奪還せよ、だ。この期に及んでもあんたは一旦巨人になってから俺を生かしたまま食わなくちゃいけない。だろ?」
俺がピークに圧力をかけたことにビビったのか、ガビがライフルを構え直した。
「ピークさん!!」
「ガビ。引き金から指を外して。」
――――ほら見ろ。やっぱりだ。