第217章 傷痍
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私はまた一人、追手の兵士をライフルで撃ち殺した。
――――同じ自由の翼を背負った仲間だった。
ごめん。ごめんね。――――言い訳はしない。
「――――これで追手はいなくなった……。」
リヴァイを託したナナのところに戻ると、処置は終わったのであろうナナがリヴァイの右手を両手で握って、神に祈るように額を寄せて俯いていた。
「………ナナ、リヴァイはどう……?」
「ハンジ、さん………。」
私の方へ向けたナナの顔は、まるで弱りきった少女のようだった。
怖いだろう。
またエルヴィンを失った時のように……リヴァイの命が目の前で失われていくかもしれない現実が。それでも泣きじゃくって、取り乱すようなことはなく……ふとリヴァイに目をやると、顔の傷口もさすがに綺麗に縫合してあって、幾分安らかな寝息を立てているように、見える。
「雷槍の爆発を至近距離で受けて生きてるなんて……さすがアッカーマン、と言ったところかな。」
「………はい………。」
ふと気付いた。
リヴァイの手を握るナナの手が、震えている。私はそっと、ナナの手に自分の手を重ねた。
「――――ナナやリヴァイが何かを怖いと震える時は、こうするって……私も決めてるんだ。」
ナナが私にかけてくれた言葉を返す。なんの足しにもならなくても。
震えていることを受け止めて、理解する。
温かさを分けて……寄り添う。
ただそれだけで、ナナはいつも私の心を随分軽くしてくれるから。ナナが愛する人を失う恐怖に震えているなら、私も同じように……その震えが止まるまで、寄り添おう。