第217章 傷痍
「――――………。」
美しい黒い瞳が割れていて……それを見た途端、思い出した。
――――エルヴィンの美しい瞳にも……闇が貫いたように、ぽっかりと瞳孔が開いていたことを。
ぞわ、と全身が粟立ち震えが止まらない。呼吸さえ急いてしまう。
――――私は何よりも……あなたが傷を負うことが怖い。
今消え入りそうに繰り返されている呼吸がやがて止まったら……この目にまた、恐ろしいほどの闇が射す。
そうなったら……私は………。
………あなたがいないと、私はもう……私のかたちを思い出せなくなる。
「――――リヴァイ、さ……。」
彼の胸に顔を伏せて、小さく呟いて……嗚咽を噛み殺した。
一瞬だけ、今だけ心の声を吐かせて。
「――――嫌だ……っ……、死なないで、側にいて……っ………。」
戦えなくてもいい。
歩けなくても、目が見えなくなっても。
ずっと私が側で足になる。目になるから。
だから逝かないで。
これ以上私は……置いて行かれたく、ない。
「――――かみさま……っ……、たすけて、ください…………。」
――――お願い。
お願いします。
どうか、どうか助けて。
叶うなら私の心臓をあげる。
目も、指もあげる。
……だから……、また、呼んで。
いつものように、『おいナナ。』って。