第217章 傷痍
「――――ハンジさんっ!!」
「ナナ?!?!」
ハンジさんはライフルを即座に下ろすと、私のほうに駆け寄ってきた。私も距離を詰めてから下馬し、ハンジさんと相対する。
ハンジさんのその目は、まるで奇跡が起こったとでも言い出しそうな、安堵の表情だ。
「良かったナナ、すぐ来てくれ!!」
「??は、はい!!」
ハンジさんのその表情の意味を――――……、私はそこに連れて行かれて一瞬で理解した。ハンジさんがまるで追手から隠すように茂みの中に横たえられていた人物……それは……
「――――リヴァイ、さん……?」
どんな姿でも彼のことを見間違うはずはない。
それなのに一瞬戸惑ったのは、頭がその情報を拒否したからだと思う。
そんなはずない。
リヴァイさんなわけがない。
そう、思いたかった。
「……雷槍の爆発を間近で受けたんだと、思う……。」
ハンジさんが言葉を詰まらせながら言う。
私はそっと彼の側にしゃがみこんで、震える手でそっとその頬に触れた。
顔の右側は額から顎までの酷い裂傷で……もしかしたらもう右目は、機能しないのかもしれない。小さな雷槍の信管の破片が、まだ顔にも、首元にも至るところに突き刺さっている。
「――――私は見張ってる。お願いナナ、リヴァイを助けて……!」
「………は、い………。」
そう言ってハンジさんは、私達に背を向けた。