第217章 傷痍
「――――うそ………。」
ジークさんはいない。
リヴァイ兵士長も……兵士も、誰一人。
この状況で考えられる最悪の現実は……兵士のほとんどが巨人化し、辛うじてそれを免れた兵士がいたとしても……食われた……と、いうことだ。
でも、でもまだ諦めない。
もしかしたら逃げおおせた仲間が、いるかもしれない。私は数基のテントの中を、使えそうなものが残っていないかくまなく探した。簡易的なものではあるけれど、工具や応急処置には使えそうな医療器具も見つけた。
「とにかく……っ……辺りを探さなくちゃ……。」
お願い、誰が生きていて。返事をして。――――リヴァイ兵士長。あなたが死ぬなんて、この世からいなくなるなんてありえない。
どうか、どうか戻って来て。
私は、ここにいるよ。
降りしきる雨の中、人影を求めて彷徨った。
しばらく経ってから……パン、という一発の銃声が、聞こえた。
「………誰かいるの……?!」
その音を頼りに泥を跳ねさせながら雨上がりの森を馬で進むと、すぐ先の森が開けている。その開けた野の先に向けって銃を構えているのは、間違いなく調査兵団の自由の翼がついたマントだ。
けれど迂闊に近付いて……イェーガー派の兵士であれば、私はまた捕らえられる。
でもその人物は驚くほど勘が良いらしく、かなりの距離があるにも関わらず、私の気配に気が付いたようだ。
俊敏な動きでこちらを振り返り、無駄のない動作でライフルを構えた。
その姿に、私は思わず声を上げた。