第216章 片生
「――――へぇ、ナナちゃんヤられちゃったの?」
「………っうるさい……!」
「――――リヴァイが怒るなぁそれは。……まぁもう、怒ったところで……か。」
「黙っ――――」
カッとなってジークさんの方へ目を向けた、その瞬間、パン、という乾いた音が聞こえた。
――――と同時に私の体がドン、と何かに体当たりでもされたように揺れて、目線を降ろすと……自分の腹部から、血が、噴き出していた。
「―――――え…………。」
ぐらりと視界が揺れて、ジークさんの憐れむような目が視界の外に流れると、曇天の空から雨粒の一つ一つが鮮明に見えるように、ゆっくりと……空が遠くなっていく。
どさ、と衝撃を感じたのは……馬から落ちたのだろう。
濡れた草の合間から見上げるのは、暗い空を背にした、フロックさんが銃を構えた姿だった。
――――息が、吸えない。
発火しそうに熱い腹部に手を触れてみると、驚くほど真っ赤な血。それを雨が洗い流して……もう、よくわからない。
「――――何も深く考えずに、駒として動いてれば死なずに済んだのにな。」
「――――………。」
「ナナさんがお前を唆したのか?――――だとしたらやはりあの女もまた、悪魔に違いない。」
「――――………。」