第216章 片生
冷たくなった心を抱えて、フロックさん達の方へ戻る。
――――まだだ。
まだ、足止めしないと……。
この先の更に下流で、ナナさんと、ハンジ団長とリヴァイ兵長が落ち合えるまで。
馬を走らせ、佇むジークさんの後姿が見えて来た。
私の動きを不審に思ったのか、フロックさんが私を呼ぶ。
「おいアイビー、捕まえたのか?」
「いえ……逃げられました。」
ジークさんの側で、馬を止める。
「――――逃げられたのか、逃がしたのか……どっちだ。アイビー。」
「――――ご想像の通りです。」
ジークさんの頭に、銃を突きつける。
「!!」
「アイビー…!お前……!」
フロックさんの後ろの数名は私の行動に動揺したようだけど、フロックさんは分かっていたのだろう。動揺しなかった。
「動かないで。この人を殺されたくなければ……!」
「裏切るのか?俺達を。」
「――――私は私の信じるように、やると決めただけです。――――少なくとも、ナナさんを監禁して輪姦させるような人に……っ……、仲間を平気で巨人化させるような人に……っ……、従わないし、屈しない!!」
手が震える。足も。
でも、やるんだ。
ふーっ、ふーっ、と興奮して息を吐く私を、銃を突き付けられたままジークさんは何の感情もない目で見た。