第216章 片生
ハンジ団長と目が合った。
――――何かの策を考えようとしている。
ということは、きっとリヴァイ兵長はまだ生きているんだ。
――――なんとかしてここから逃がせば……今度こそナナさんにもう一度会えたら、きっとナナさんが命を助けてくれる。大好きな2人に今度こそ、恥じないために。
どうやってでも―――――……、ここからハンジ団長とリヴァイ兵士長を、逃がす。
「フロックさん……っ……!巨人の様子が、おかしいです………!」
その時ちょうど動きがあった巨人の方へと、注意を向かせる。実際に不思議なことが起こっていて……いつもの巨人が消えゆく様子とは違って、兵士みんなが銃を構えた。
――――私も、携帯していた小型の銃を構える。
するとそこには……ジークさんが……立っていた。
ハンジ団長のほうにチラリと目線を送ると、絶望したような表情でジークさんを見つめた後、意を決したように僅かに俯いた。次の瞬間、リヴァイ兵長を抱えてドボン!!と濁流の中に飛び込んだ。
「あ?!」
「追え!!逃がすな!!」
――――追わせてはいけない。
私はあたかも一緒に追うフリをして、どさくさに紛れて馬に飛び乗り、下流へ向かって発砲する他の兵士達に続いた。
―――――そして、数十m下ったところで……同じ翼の紋章を背負う仲間を――――……撃った。
「――――ぐっ?!!」
その兵士の胸を銃弾が貫いて……どさ、と馬から落ちた。それに気付いた、更に前を駆ける2人が馬を止めて振り返る。
――――躊躇わずに、私はまた彼らを撃ち抜いた。
小さく呟かれたその口は、『なんで……。』と、言っていたように思う。
――――ごめんなさい。
言い訳はしない。
私は私の信じるもののために、あなた達を――――……殺した。