第216章 片生
あの古い屋敷の地下牢で、ナナさんが凌辱されるそのベッドが軋む音を聞いた時も。
助けに行けたのに……耳を塞いで、聞こえないふりをした。
――――自分に火の粉が降りかからないようにするために。
そして……ナナさんが汚れてしまえば、リヴァイ兵長は私を見てくれる?――――……そんな下らないことが頭を過った。
でもナナさんは強くて……私のせいにしなかった。
そして……何をされても、乱れないと言い切った。
――――そんな彼女に対して私はお利口なアイビーでいるために、泣いて謝った。もちろん心からの謝罪で、その心に嘘はない。
だけど……、そうして、自分の罪の意識を軽くしたんだ。
―――――そんな私が、私は嫌い。
ルイーゼに言われるまま流されてイェーガー派に属して、残酷な現実から逃げて、都合よく自分の心と身を守って、ここにいる。
――――私は私の……意志で、今度こそ……
ナナさんが言った、“誇れる自分” に、なりたい。