第216章 片生
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――――ハンジ団長が負傷者と思われる兵士に駆け寄って、その人を抱き起した。
その時の反応が……少し、変だと思った。
もしかしたら負傷することでハンジ団長を動揺させるほどの人……?
まさか、まさか……
そんな嫌な予感を抱えながら、フロックさんがハンジさんの背後に近付くのと一緒に、そっと側に寄ってハンジ団長の腕に抱えられた人の顔を見た。
――――ひどいもので……、あまりにズタズタで、最初……誰だかわからなかった。ただフロックさんの言った “一番の脅威” という言葉で、目の前の無惨な姿で横たわるその人が……憧れ続けたリヴァイ兵長だということに、気付いた。
「―――――………っ……!」
なんてこと。なんて……ひどい……。
でも、私はこの時の自分の心の端でひっそりと、『巨人化していなくてよかった。』と、思った。
――――自分が差し入れたワインでこの人の自我を失うようなことになっていなくて良かったと、こんな状況下でも自分の心を最優先に守ろうとするその頭の中にうんざりする。
――――ナナさんなら、きっとそんな汚いことは思わない。そんなことを思う前に、一生懸命、この人の命を救うことを考えて……そして実際に、それができる人だ。
――――こんな私が、リヴァイ兵長に選ばれるなんて、あるわけない。
だって私はいつだって自分を一番に考えてる……。