第216章 片生
「……?!アイビー、なぜお前がここにいる?」
「――――ッナナさんが、逃げました!!!今イエルクさんとカールさんは捜索中、私は急ぎ伝令に来ました……!」
「なに?」
「ナナさんが駆けつけるとしたらハンジ団長の元かと思い、追って来たのですが……、ここには現れていませんか?」
きょろきょろとしながら話すアイビーの挙動を、フロックはじっと見ていた。
――――何かを、疑っている目だ。
元々アイビーはナナを慕っていたし……レストランでのワインにジークの脊髄液が入っていた時の反応からも、イェーガー派のやり方に疑問を持っているに違いないということは誰が見ても分かる。
おそらくフロックも……アイビーがナナの味方に寝返って、今何か企んでいるのではないかと疑心の目を向けている。
と、その時だった。
私たちがいる川沿いの更に下流の方から、ドォン!!と大きな爆発音がした。
「……?!なんだ……?!」
アイビーへ向けられたフロックの疑惑の目が一転して、下流の――――……爆音がした方へ向かう。
「落雷では?」
見慣れないイェーガー派を名乗る兵士が落雷かと言うが、私はこの音を聞き間違えない。何度も何度も、試作段階から訓練、実践まで何度も聞いて来た。
――――今の音は、雷槍だ。
ジークの拘留地はまだ下流で、いくら雷槍の爆発音でもさすがに聞こえるはずがない。
――――何が、起こっている……?
「……音の方向に何かあるはずだ。行くぞ。」
しばらく川沿いに下流の方へと進むと、巨人特有の蒸気が見えた。更に近付くとそこには……蹲る巨人と、明らかに至近距離で爆発を受けたのであろう、息も絶え絶えにもがき苦しむ馬が2頭。その後ろに繋がれていたのであろう荷台は、見る影もなく木っ端微塵だ。