第216章 片生
「――――リヴァイ兵士長は律儀な人だから。」
「………?」
「―――あの日、リヴァイ兵士長に教えたアイビーの作戦……、いつかきっとちゃんと、行動に移すと思うよ。」
アイビーは眉を寄せて、切なく……でも嬉しそうに笑った。
「だから見届けて。ちゃんと生きて帰ってきて。」
「――――本当は少しだけ、ナナさんじゃなくて私を選んでくれたらいいのにって、思ってます。」
「知ってる。」
アイビーが困った顔で笑うから……私もまた、悪戯な顔でアイビーに答える。
「でも渡さない。」
「……大人げないです、ナナさん。」
「そうだよ。――――愛してるの。誰にも渡したくない。例え大事なアイビー、あなたにだって。」
「――――はい、あなたが私を大事に想ってくれていることも、リヴァイ兵長をこの上なく愛していることも………ずっと見てたから、わかります。」
何でもない会話をして……お互いふっと笑い合う。
「――――じゃあね、また、あとで。」
「はい、また……あとで!」
そう言ってアイビーは、マントをまた眼深く被って馬を駆った。私もまた、ここまで運んできてくれた可愛い相棒の鼻をよしよしと撫でてから騎乗し、フロックさん達に見つからないように巨大樹の森の奥深くへと進んだ。