第216章 片生
「……アイビー。」
「……ナナさん。」
私たちは同時にお互いを呼び合った。目を見合わせてアイビーの言葉の続きを待つ。
「――――私、フロックさんのところに行きます。『ナナさんに逃げられた』って言って。」
「…………!」
「足止めして、少しでも時間を稼ぎます。だから……森の中を通って、リヴァイ兵長に……ナナさんから伝えてください。」
――――本当は彼女が自ら行きたいだろう。
リヴァイ兵士長のところへ。
でも、あらゆることを考えて……自分の気持ちよりも、みんなにとって最善になりうる方を選んだ。
「わかった。―――でも、危険だよ?もし……嘘だってバレたら、ただじゃ済まない……。」
「わかってます。でも、私のけじめ、です……!」
怖くないはずがない。
けれどアイビーはぐっと拳を握って、頷いた。
「――――あなたの覚悟は分かった。私が必ず伝えるから……足止めをお願い、アイビー。」
「はい!では、これで。」
またすぐに再会できる、束の間の別れであると信じながらも……、道を分かつその一瞬が、少し怖い。
私はアイビーを呼び止めていた。
「待ってアイビー。」
「はい?」
一度馬から降りて、アイビーの側へ行く。
騎乗したまま、不思議そうに私を見下ろすアイビーの手をとる。