第215章 悪夢④
目の前で視認できた光景は、雷槍の先端が刺さったジークの腹が破れるように引き裂かれて言葉通り二つに断たれた瞬間。
そして同時に砕け散った雷槍本体と破壊された荷台のおびただしい数の破片が、爆ぜる雷槍の爆音と熱風と衝撃波に乗って俺の方へ襲い来る、その鋭利な先端が目視できるほど一瞬、その時が止まったように見えた。
頭の中が勝手に一瞬を永遠のように見せているだけで……体の反射速度は同じようにはいかない。
その爆発と破片の襲来に成す術もなく、俺の体は荷馬車から吹き飛ばされた。その威力は巨人の硬質化をも破壊する威力だ。
心臓を揺らすような衝撃波を受けながら生まれて初めて、『死』というものを間近に見た気がした。
――――本当に自分でも呆れるほどだが……、そんな瞬間に俺の頭に浮かんだのは、たった一人、あいつの顔だけだ。
「――――ナナ………ッ…………。」
俺が呼ぶと、振り返って柔く笑って……俺の方へ駆けて来る。
――――もう一度そんなお前をこの腕に抱く。
そう、そのために……生きて帰らなきゃならねぇのに………。