第215章 悪夢④
どさ、と濡れた草むらに投げ出され、体はぴくりとも動かせなかった。
息を吸う喉が、焼けるように熱い。
目も、開かない。破片をもろに食らったか。
口の中は鉄と火薬の味で満ちていて――――……
腹の奥から、おびただしい量の血が喉を逆流して口から吐き出される。
――――ナナ、……ッナナ……。
エルヴィンに操を立てるお前をまたこの腕に引き戻そうとした時……、自分が死ぬことで俺を苦しめるからと……俺の腕に戻ることを躊躇うお前に約束した。
お前が病で倒れるなら、俺が最期まで抱いててやると………約束した。
死ぬ、わけには……いかねぇんだ……。
もう、ナナが愛する者を失って泣くのは、終わりにしてやらねぇと。
だから……いつだってお前が望む限り俺は側にいる。
「――――………待ってろ………帰、る……。――――……ナナ………」
ひゅ、ひゅ、と辛うじてできる呼吸の合間にナナを呼ぶ。
――――死ぬことなんて怖くなかった。
ずっと。
今も死は怖くない。
――――俺が怖いのは、俺が死んだ後のお前がどれほど傷つくのか、泣くのか………
お前が絶望し生きていくことを諦めてしまうことが――――……
自分の死よりも何よりも………とても怖い。