第215章 悪夢④
道中、馬を走らせながらアイビーのこれからのことを考える。
「ねぇアイビー。」
「はい。」
「……イェーガー派のフロックさん達もおそらく、ハンジさん達の案内の元でジークさんの居場所へ向かってる。……そろそろ、出くわしたっておかしくない。」
「………はい………。」
並走する馬上で僅かに俯いたアイビーの横顔は……いくつかの覚悟をしている、兵士の顔だ。そんな彼女をよそに、私はまだ……アイビーを兵士としてではなく、少女として心配したがっている節がある。
「私のことをフロックさんは殺さない。……彼の目的は、この世界の顛末を……流れる血を、人々の悲鳴を……私に目を背けさせずに見せることだから。――――でも、アイビー……あなたは……。」
「――――危険、ですね。裏切者には即、死を。そういう……人たちの集まりですから。」
「――――無理に一緒に来なくても……逃げて、いいんだよ……?」
ここまで共に駆けてきて、今更……と思うかもしれない。
けれどどうしても……フロックさん達に相対するその可能性を、その瞬間を想像すると……怖くなってしまう。
彼女の兵士としての誇りを傷つけるかもしれなくても、『逃げて』と、言いたくなってしまったんだ。
「――――リヴァイ兵長がもし……ワインを飲んで巨人化して、いたら……ナナさんは、どうしますか。」
「―――――………。」
アイビーの問に、返答できなかった。
なぜなら、想像すらしたくなかったからだ。
どう、するのか。
リヴァイさんが、もし……巨人化して、人を喰らいたいと彷徨っていたのなら……それを初めて、私は想像した。