第214章 悪夢③
アーチは俺の言葉を聞いてまた、俯いて震えながら泣いていた。
「――――俺はジークを追う。足手まといはいらねぇ。ここにいろ。」
それ以上なんの言葉がかけられる?
――――なにもない。
あとはこいつがどう、ケリをつけるかだ。
――――それに、今になってようやくジークのあの無益な言葉の意味が分かって……尚更生かしてはおけない。
『あんな小さくて華奢だと、壊さないように気を遣うだろ?色々と。―――まぁあの子なら、例え少しくらい大きくても……可愛いんだろうなぁきっと。』
――――例え少しくらい大きくても……、それは……ナナにワインを飲ませる算段をしていたってことだ。
今ナナはジークの咆哮が聞こえるような距離にはいないはずだが……、次その咆哮で巨人化して―――……俺が項を削がなきゃならねぇのは――――ナナかもしれない。
あのクソ髭なら平気な顔でやりやがるに違いねぇ。
「――――絶対にここで、四肢を捥いで……誰か別の奴に、食わせてやる。」
俺は最速でジークを追った。
どうやら巨人を操って……その巨体に乗って森の中を移動しているようだ。だが立体機動の速さから逃げられるわけがない。3体の巨人を引き連れて逃げるその後ろの1体を、背後から一撃で削ぐ。
アンカーを逃げる進行方向の木の幹に撃ち、高速でワイヤーを巻きとり、瞬時にその目前まで回り込む。
……ジークの横をすり抜けるその一瞬で見た奴の顔は、恐怖の入り混じった驚愕の表情だった。
もう1体の巨人も瞬殺すると、焦りきったような顔で不満を垂れながら自らの手を――――噛んだ。
「――――ッ何だよぉぉおおおもおおお!!!またかよぉおおぉぉぉ!!」
――――俺と戦うことが相当嫌らしいな。
だが、仕掛けて来たのはお前だ。
ジークが発光し巨人化したその瞬間に、巨大樹をかけ上がって上に退避する。
相変わらず気持ちの悪ぃその面は……必死の形相だ。