第214章 悪夢③
――――兵長。
所詮さ、男って女に敵わねぇだろ?あんたもそうじゃん。
ナナにベタ惚れで……例えばナナがいない世界で……あんたは生きていけるか?
幸せに……なれるのか?
ならなきゃいけないって、生きていかなきゃいけないって、思う。
あんたの側でずっと戦って、その片翼を担って――――世界が変わるその日まで。そう、想い続けて来たけど……やっぱり心はどこか虚ろで、決して埋まらない空虚を抱えて生きてる、みたいだった。
馬鹿な巨人になっちまっても、抗う選択肢は、あるにはあった。
――――巨人化はしちまっても人間に戻れる方法。9つの巨人を宿している人間……つまりジークを食えばいい。
そういう選択肢もあった。
……けど……そしたら次はヒストリアに、俺を食わせることになるんだろう?――――そんなの、あんまりじゃねぇか。見知った仲間をあいつが……食わなきゃならないなんて。
それこそ悪夢だろう。
――――そんなことをさ、俺なりに一生懸命考えたら……やっぱり“誰も殺さない、誰にも殺させない”のが一番だった。
――――そういう屁理屈をつけながら、まあ……こうやって俺は最愛の女の元に、ずっと行きたかったのかもしれない。
――――アーチ……ナナ、
兵長、……ハンジさん……
最後まで一緒に戦えなくてごめん。
でも、最高だった。
こんな残酷な世界の中で……あんた達と生きてこれたことは――――……かけがえのない、俺の宝だ。
――――みんなに想いを馳せると、リンファが零れた涙を拭わないまま少し笑って……
その手で、俺の瞼をそっと……閉じさせた。