第214章 悪夢③
「………イ、チョ………ロ、ア………エア、イ………。」
その巨人は何か言葉のようなものを発した後………今までに見たことない顔をした。
あいつの顔で……確かにサッシュのあの――――
能天気でひたすら明るいあの顔で。
――――笑ったんだ。
「―――――ガァアアアアアッ!!!」
その次の瞬間、木々の葉がビリビリと揺れるほどの雄叫びを上げて―――――……サッシュはその手を、すごい速度で振り上げた。
……ッやられる、そう……思った。
「――――ッ…………?!?!」
サッシュはその振り上げた長い手を自らの項にやった。
爪を立てて――――、すげぇ握力で、その脊椎の部分に指を食い込ませている。
「……な、んだ……?!お前、まさか――――………。」
「――――兄ちゃん、やめろ!!!死んじまう……っ!!!」
サッシュは、巨人の弱点とされる項の部位を的確に……自分で引きずり出した。
――――これは、自殺行為だ。
「――――ッガ、ァアア………ッ………!」
サッシュの体は全ての筋肉が弛緩し、掴まれていたアーチは解放された。
そのままサッシュは倒れ込んだ。
僅かに悲しく笑ったような表情のまま蒸気を上げて、目を閉じる頃にはまるで最初からなにもなかったかのように、その肉体も血液すらも消え去って……
サッシュが俺達の側に……確かにそこにいたという痕跡は、何一つ残らなかった。
「―――――に、いちゃ……っ……!――――ぁああああああああっ……!!」