第214章 悪夢③
「――――お前ら……。」
――――感傷に浸っている場合じゃない。
たとえそこにいようとも……、その命を絶つ。
どんなに大事な、仲間でも……。
ブレードを逆手に持ち替え、さっきまで話していた……俺を慕ってついてきていたバリスの項を――――……一撃で削いだ。
バリスの巨体はドォン!と大きな音を立てて地に落ち、やがて……最初から何も存在していなかったかのように、蒸気に紛れてその姿を消した。
何も感じない。
そうやって生きて来たはずだ。
――――今まで。
次々に襲いかかって来る巨人たちの項を削ぎ、切り刻んで行く中……ふと目にしたのは、捕食しようと伸ばされるその手から逃げることしかしないアーチの姿だ。
「なんでっ……、いきなり……!こんな………!」
「アーチ!!何やってる!!逃げてるだけじゃ埒があかねぇ!!!ッ……殺せ!!!」
「――――そんなっ……、だって……!仲間、だ……!」
「仲間でも……もう人間には戻らねぇ!!終わらせてやれ!!!死ぬぞ!!」
「――――あ、ぁああっ………!!」
アーチの目から滴が飛んだ。
何かに耐えるように歯を食いしばり、元仲間の巨人の項を――――華麗に削いだ。……やりやがる。
サッシュに次ぐ実力ってとこか。
だが、脆い。
見知った顔に切り込む時には動揺が隠せず、斬撃がブレて……カウンターを喰らった。
「――――ぐッ……!!」
項を削ぎ切れなかった巨人が、アーチの体を手で弾いて……吹き飛ばした。なんとか受け身を取りながら地面に転がったアーチが体勢を立て直そうと顔を上げた先には――――………
「――――にい、ちゃん……?」
アーチは動けないまま、巨人化してもわかるその最愛の兄の姿を見上げていた。
「――――く、そっ……!アーチ、やれ!!食われるぞ!」
「………で、き………ない………。」
俺は他の巨人の項を削ぎながら、アーチとサッシュの動向からも目を離さなかった。
アーチはサッシュ相手に、ブレードを構えることすら――――しなかった。
………あまりに酷だろう。
………あんなに慕っていた兄貴を………あいつの手で殺させるのは……。
アーチを助けに行きたくても、まだ十体以上が俺を狙って手を伸ばして来る。