第213章 悪夢②
「面白いよ。7回も読んだ割には。――――けどやっぱり目新しい話が欲しいな。なぁ兵長、ナナちゃんとの馴れ初めとか聞かせてくれよ。」
「――――うるせぇ、黙ってろよクソ髭が。」
「あんな小さくて華奢だと、壊さないように気を遣うだろ?色々と。―――まぁあの子なら、例え少しくらい大きくても……可愛いんだろうなぁきっと。」
「―――………。」
なんだ、何を含んでやがる?この無益な会話に。
――――もしナナに何かしようと企んでるとしたら……手を出す前に、なんとしても殺してやる。
「なぁワインはもう残ってないのか?」
「一月もここにいるんだぞ。一滴も残ってねぇよ。」
「まったく……ひでぇ拷問を考えるもんだ……。」
――――ピクシスの返答がどうであろうと……奴を切る。
やはりこいつは俺達の敵だった。それが判明した時点で人質に手足をつけとく理由はねぇよな。
――――長かった。エルヴィン……あの日の誓いをようやく果たせそうだ。
お前たちの死には意味があった。
それをようやく証明できる。
ジークを切る、そう決意をして背を向けた。
すると、頭上から俺を追ってサッシュが降り立った。さっきまで迷いのある顔をしていたのに、その顔は随分凛々しい表情になっていて……こいつはこいつなりに腹を括ったと理解した。
「――――兵長、ジークの手足……本当に捥ぐなら俺がやります。」
「あ?」
サッシュの言ってることの意味がわからねぇ。
怪訝な顔でその真意を問う目を向けると、サッシュは僅かに目を逸らしながら言った。