第213章 悪夢②
「――――確かにそれならまた王家の血筋の巨人を生み出せる。……けど……女王の出産を待っている間に外からの総攻撃を受ければ終わりです。」
「……そうですよ、無事に出産できるとも限りませんし……。」
「こちらから再びマーレに仕掛けて敵の攻撃を遅らせることもできる。無茶は承知だがここが勝負所だ。これ以上奴の思い通りにはさせねぇ。――――エレンが本当にジークに操られているのか知らんが、ジークさえ失っちまえば連中はおしまいだ。」
――――気に食わねぇ。
何事もなかったかのように本を読んでいるあのクソ野郎が。
手駒を上手く動かして……やってくれるじゃねぇか。
端から俺はこいつを信用などしちゃいなかった。
――――本当は今すぐにでもこいつを殺してやりてぇが……まだこいつには使い道がある。
もう少し……もう少しの辛抱だ。
「――――ピクシスにそう伝える。行け。」
「本気ですか兵長……。」
「奴の四肢でも捥いでおけば、じいさんも腹括るだろ。」
――――この時の俺の過ちは……奴が抗う術が、 “獣の巨人になる” ことだけだと、思っていたことだ。
あのクソ野郎は……自らが巨人化することで得られる力を過信していなかった。どこまでも周到に緻密に策を巡らせていた。
――――それは……後で考えれば、このクソ野郎にはこのクソ野郎なりの信念と……成し遂げるべきことがあったからだとわかる。
「――――おい、読書は楽しいか?」
俺は飄々と読書に勤しむジークの側へ降り立った。
ワインが入っていた木箱に腰かけ、ボロボロになった本をめくっている。30人の完全武装した兵士に囲まれて……下手すりゃ殺されてもおかしくないこの状況で……こいつのこの余裕はなんだ……。