第213章 悪夢②
「――――エレンを他の奴らに食わせるつもりってことだ。俺達の手で。」
「―――――!!」
「……兵長の、仰る……通りです。」
愕然とするサッシュをよそに……俺の脳裏には、今まで死んでいった仲間の顔が鮮明に思い出される。
何人死んだ?
――――エレンの命を守るために……。
それが人類の生き残る希望だと信じて……。
信じていた仲間に喉を裂かれた奴、叩き付けられバラバラに散った奴、踏みつぶされ原型も留めず死んだ奴、飛来する石つぶてに頭を吹っ飛ばされた奴……あいつらは……何のために、死んだんだ……?
まるで……ひでぇ冗談だな。
俺達が見てた希望ってのは……一体何だった…?
あの死闘の果てがこの茶番だと?
ふざけるな。冗談じゃねぇぞ。
「――――なんだよ、他にやりようはあるだろうがよ……!」
俺と同じ物を近くで見て来たサッシュも同じように、これまでエレンを守るために失われてきた仲間のことを想ったのだろう、怒りに声を震わせながら言った。
「サッシュの言う通りだ。巨人に食わせるべきクソ野郎は他にいる。」
「……え?」
「――――あそこにいるクソ野郎だ。」
「………どういうことです?」
「――――一旦中継ぎとして、別の奴に獣を移すってことですか。」
バリスも理解に及ばなかった事柄を、アーチはすぐに理解した。残酷な発想に慣れているのだろう。アーチの言葉を聞いてサッシュはまた戸惑ったように目を開く。
「そうだ。イェーガー派とかいうのを一人でも捕まえて巨人にしジークを食わせてやれ。」
「なっ……、でも兵長……っ……そしたら王家の血筋は……!」
「ヒストリアが覚悟した通りならそいつを食ってもらう。数か月後の出産を待ってな。」
「でも……!ヒストリアを犠牲にすることだけはしたくないというのは、エレンの固い意志だったじゃないすか……!俺も……104期の奴らだって……、それは……!」
――――サッシュが必死に食い下がるが、そんな甘ぇことを言ってられる状況じゃないことは一目瞭然だ。