第213章 悪夢②
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結局……ジークをここに拘留してからもう1ヶ月だ。ようやく兵団本部からの連絡があったと思えば……その内容はクソみてぇな話だった。
「――――ザックレーが殺された?」
「はい……今壁内は実質的にイェーガー派によって支配されています。」
情報を繋ぐべく使いに出したバリスとアーチが戻って来た。俺と一緒にその報告を受けていたサッシュは、言葉にならないやるせなさを、唇を噛みしめながら抑え込んでいるように見えた。
「すべてはジークやエレンがイェレナを介して実行した一連の工作ではないかと考えられています。」
「それで?」
「近くイェーガー派の要求通りエレンをジークの元まで案内する手はずとなっております。」
バリスの口から報告されたそれに俺は違和感があった。
――――あの一筋縄じゃいかねぇじじぃが……、何よりもこの島の民を守ることに重きを置くじじぃが、そんな簡単に折れるわけがない。
「ピクシスが?大人しく従うって?」
「………さすが兵長。お察しのとおり、司令は堅実な構えです。エレンをこの森へ案内する道中に打開策を巡らせていますよ。」
アーチは元中央憲兵だけに……もっとエグい駆け引きも見聞きしてきたのだろう。さも当然かのように、表情を変えることなく言った。対してバリスは……エレンが入団して来た時から見知っているからか……そりゃあ情もあるだろう、苦い顔で俯いた。
「―――とても……残念ですが、エルディアをイェーガー派やジークの支配から守るためにはこれしかありません……。」
「――――待てよ、何だよ……残念ですがって……。ピクシス司令は、一体何を……。」
サッシュがその想像をしたくないといった青ざめた顔で、バリスに問いただす。
――――こいつは馬鹿正直で純粋だからな。
思いもつかねぇんだろう。
――――まさか、エレンを自分たちの手で別の誰かに食わせる、なんて。