第213章 悪夢②
アイビーが運び直してくれた食事をとって、眠る。
眠る時間には……やっぱりだ。
見張りはもちろん一人。アイビーを一人でつけることはしない。私を逃がす可能性だってあるから。男2人のどちらかが1日交替で見張るんだろう。
きっとここにいないもう一人は、上の部屋でさぞかしぐっすり眠ってる。
――――そりゃそのはずだ。あれだけ……何度も出したのだから……眠って回復しなくちゃいられないはず。
「――――逃げようとしても無駄だぞ。見張ってるからな。」
「……………。」
牢屋の外に置かれた椅子にドカッと腰かけて腕を組むその男に、私は何も言わず目線だけを投げた。
――――誘うような……流し目で。
その男は、一瞬ピクリと眉を動かした。
「………変なこと考えるなよ、大人しく寝ろ。」
そう言った男の目線を観察する。私の表情を見てから……視線は胸元に下ろされた。引き裂かれた衣服の隙間から胸の膨らみが覗いた状態だからか……、小さく男はごくん、と唾を飲んだ。
――――もうひと押しで、きっと……やれる。
釣ってやる。
しばらく私はベッドに横たわったまま、眠ったふりをしていた。耳を澄ますと、椅子の軋む小さな音が聞こえる。きぃ、と鳴る音が増えて来ている気がする。それはきっと……椅子に腰かけたままうとうととしていて、かくん、と体勢が崩れた時に鳴る音。ちょうど頃合いだ。
「――――んっ……………。」
――――小さく、喘ぐ。
聞こえるか、聞こえないかくらいの声で。
男に背を向ける体勢でベッドに横になったまま、もぞもぞと手を動かしながら、腰を逸らして顎を逸らす。
「…………?」
カタ、と小さく男の据わる椅子の足が浮いた音がした。
――――気付いた。
もうひと押し、すれば………。
「――――ぁ………っ……、は………。」
看守にバレないように、自分を慰める淫らな女。
先ほどの淫行では満足できていない身体を自分で弄ぶ。
それを見たらきっと………。