第213章 悪夢②
「あぁぁあ……っ………。」
アイビーは床にぺたん、と座り込んで大きな声を上げて泣いた。自分を責めているのか。私のことに罪悪感を抱く必要はないと伝えたくて、破れた衣服をなんとか身に纏って鉄格子の側まで近づく。
「ごめん、なさい……っ……、ごめんなさい……!」
「………アイビー。」
「ごめんなさいぃぃっ………!」
うわぁぁああああ、とアイビーは床に額を擦りつけて激しく泣いた。私は何もできずにただアイビーの頭をふわりと撫でながら、言葉をかける。
「――――何に謝っているの……?」
「っ……わ、私……っ、とんでもないこと……っ……!リヴァイ、兵長たちに……っ、知ら……っ、知らなくて……っ……!」
「うん……。」
アイビーはリヴァイ兵士長に恋をしている。
あの翼の日から……いや、きっともっと前………クロルバ区から出立する壁外調査の時にその姿を見てからずっと。
ジークさんの脊髄液や毒物が混入していると知っていたら、絶対に渡さなかったはずだ。真実を知らせないままアイビーやルイーゼの善意を利用して疑わせずにワインを送り込む……。なんて、卑劣なことを……。
そして私が危惧しているのはもう一つ。
この……私を隔離しているこのメンツだ。
……私を徹底的に嬲りたいなら、なぜわざわざアイビーをつけた……?おぞましい理由しか、私には想像できない。
――――あの時のアイビーの反応で、炙り出した。
アイビーがイェーガー派の策に同調しておらず、自分の行いを後悔していることを。
調査兵団側に寝返るかもしれない駒はいらない。
ならここで……この誰もいない寂れた屋敷に閉じ込めて、私もろともに――――……監禁強姦して、廃人にしてしまえばいいなんて……私の考えすぎであってほしい。
……けれどおそらく……あの2人が私に飽きたら次は――――……。
おぞましい想像にぶる、と身が震える。
アイビーの未成熟な心も体も、もう十分すぎるほど傷ついている。これ以上あんな……恐怖を、苦しみを与えたくはない。