第212章 悪夢 ※
ひひひ、と卑しい笑いが聞こえる。
その会話から――――フロックさんが私に向ける……いや、エルヴィンに向ける憎悪はまだ消えてないんだとわかる。
中背で筋肉質な体格をしたその兵士は、細い目をさらに興奮で細めて私に劣情を抱いたような視線を向ける。私が逃げられないように、もう一人の男は牢屋の外で鍵をかけた。かつ、かつ、と床をブーツのかかとが鳴らして私を部屋の奥へと追い込むように歩を進める。
――――怖くないと言ったら嘘だけど……、絶対、泣いて縋ったりなんてみっともない姿は見せない。
「――――さすが団長補佐、気が強そうな目だな。ゾクゾクする。」
「――――………。」
「なぁ、ハンジ団長の前のエルヴィン団長の下の世話もしてたんだろ?得意なんだろうが、男を喜ばすのが。はぁ………ほら……、楽しもうぜ?……あんた本当に可愛い顔してんなぁ……。」
首元のブラウスのリボンの端をつまんだかと思うと、その手が乱暴にリボンを解いた。胸元が暴かれ、肌が晒されても、侮蔑の意を含んだ視線を決して彼から外さなかった。
「――――は、いつまでそんな目してられるかな……っ……!」
「……っ!!」
男は私の腕を乱暴に引いて、埃まみれのベッドに投げつけた。そのままお構いなしに私に覆いかぶさって、はぁはぁとぬるい息を興奮気味に吐きながら私の衣服を無理矢理に引き剥がす。
―――怖くない、別になんてことない。
――――でも………。
「っああ、たまんね……っ……、久しぶりだ……女ヤれるの……っ……!しかもこんないい女……っ……!」
じゅる、と汚い音を立てながら胸に吸い付いてべろべろと、下品に舌を動かす。
気持ち悪い。
気持ち悪い。
気持ち悪い。
獣のように私を食みながら、欲望に忠実にズボンを引きずり降ろして…、自らもカチャカチャとベルトや金具を外す音をたてはじめる。