第212章 悪夢 ※
目隠しを外されて馬車から降ろされたそこは、まるで見たこともない、森の奥にひっそりとたたずむ古びて朽ちた小さな屋敷。その屋敷の地下牢に連れられ、手を縛られたままそこに入れられた。
アイビーの他の2人の兵士は……2人共私よりも少し年上の……リヴァイさんと、同じくらいの歳だろうか……それにしてはヘラヘラと、しまりのない口元の嫌な笑みに嫌悪感が募る。その感情を込めた目で彼らを睨むと、ひゅう、と口を鳴らしてまたにやにやと厭らしく笑った。
「………おいアイビー、飯の準備して来い。」
「え………まだ、早くないですか。」
「あぁ?察しろよ。――――それとも見たいか?本当に。実演の性教育。」
「………っ……!」
アイビーは自分のこれまでの行動を省みているのか……、この世の終わりでも見るかのような光のない大きな目を暗く濁していた。
何かを吹っ切るようにぐぐぐ、と苦しそうな表情で俯いて……バタバタと地下牢を後にした。
――――いいの、それで。
見ないで欲しい。
そして……叶うなら、巻き込まれないでほしい。
守りたい。
こんな何の力もない私だけど、自分の行動に深く傷ついているアイビーをこれ以上傷付けたくはない。
――――犬に噛まれたと思えばこんなこと、なんともない。
心は折られない。何をされたって。
その場を去ったアイビーの背中を見送ると、2人の兵士達はすぐに牢屋の鍵を開けた。
「―――先俺な。一応は見張りがいるだろ、お前見てろよ。」
「……くそ、いいとこどりしやがって。」
「まぁそう言うなよ。――――楽しもうぜ、こんなクソみたいな世の中で……溺れられるものなんて少ないんだからよ。」
「――――だな。フロックも『殺す以外、何しても許す』って言ってた。あれ、そういう意味だろ?」
「――――だろうな。」