第212章 悪夢 ※
――――また、割れるように頭が痛む。
鈍器で頭を殴打されるような痛み。
――――でも違う、これは……決して、アッカーマンの習性なんて関係ない。
「ッ……ない……。」
「――――本来の自分を失い命令に従うために作られた一族。つまり奴隷だ。」
エレンの言葉に雑音が混ざり……何か分厚い真綿越しにでも聞いているように、靄がかかる。
体ががたがたと震えて……その先のエレンの言葉が……私は怖くてたまらなかった。
「やめろエレン!!!」
「俺がこの世で一番嫌いなものがわかるか?不自由な奴だよ。もしくは家畜だ。」
「エレン!!!!」
聞こえなくなってくのはなぜ?
アルミンが私のためにエレンを怒鳴りつけているはずなのに。
アルミンの声は聞こえなくて……何かに遮られて雑音だらけなのに……聞きたくないはずなのに、やっぱりあなたの声だけ拾ってしまう。
どんなに小さな声でも、私の心臓に入り込んで鼓動を乱す。
「そいつを見ただけでムカムカしてしょうがなかった。その理由がやっとわかった。何の疑問も抱かずただ命令に従うだけの奴隷が見るに耐えなかった。」
―――――やめて、私の存在する理由を――――あなたが否定しないで……。
「俺は……ガキの頃からずっと――――……」
私はあなたがいれば―――――……
あなたといるために――――……ずっと………
「ミカサ。お前がずっと嫌いだった。」
――――その言葉はあまりに鮮明に残酷に聞こえて………
私のこれまでの日々も、愛おしい記憶も……全てが音を立てて崩れ落ちて……
心臓が――――……潰れてしまいそうだ。