第2章 変化
「い……いえ………。」
言葉が、出てこなかった。
男性は慣れた様子で松葉杖のまま食卓テーブルの椅子についた。母が目の前に紅茶の入ったカップを並べ、自身も席についた。
「あなた、この子が私の娘。ナナ・オーウェンズ。そして世話係のハルです。」
「……初めまして、ナナ。僕はショウ。ショウ・リグレット。」
「……初めまして。ナナ・オーウェンズです。母が……お世話になっております。」
なんと会話を続けて良いのかわからず、的外れな事を言ったのかもしれない。リグレットさんはふふっと優しく笑った。
「世話なんて。むしろこちらが世話になってるよ。……本当に助かっている………この……足だからね。お礼を言うのは……いや、お礼を言う前に、君たちに謝らないといけないのは僕のほうだ。君たちのお母さんを奪ったのは、この僕なのだから。」
核心をつく言葉に、私はリグレットさんを刺すような視線で見つめた。
「………あなた。私から……話してもいいかしら?」
「………ああそうだね。すまない。」
母がそっとリグレットさんの手に自らの手を重ねて言った。
「ナナ。今から話すことに、嘘はないと誓う。そして、懺悔でもない。許しを乞いたいわけでもない。ただ、私の目から見た事実よ。それをどう受け止めるのかは、あなた次第……。」
「わかった……。」