第212章 悪夢 ※
「いいえ。あなたは操られている。」
私の言葉にエレンはとても冷めたような……怖い、目をして私を見た。
「あなたは敵国とはいえそこに住む関係ない人や子供を巻き込むような人じゃない。誰よりも私たちを想い大切にしてきたのがあなた……。」
今も瞼から消えない。
レベリオでの地獄絵図。
罪もない民間人を、泣き叫ぶ子供を……踏みつぶしたエレンの姿が……。
否定したかった。
あれはエレンじゃない。
エレンじゃない誰かがやらせたことで、仕方なかったんだって。
「―――だってそうでしょ?幼い頃攫われた私を助けてくれたあなたは……マフラーを私に巻いてくれたのは……あなたが優しいからでしょ?」
思わず立ち上がって訴えた私に、エレンは体の芯から震えるような凍てついた目線を寄越した。
「――――手はテーブルの上に置けと言ったろ。」
――――ああもう、駄目なのかもしれない。
私の声は、言葉は……届かないのかもしれない。
そう……絶望した。
――――まるで悪い夢でも見ているよう。
エレンは続けてアルミンのことも……水晶体の中に眠るアニの元へ通っては話しかけていることを取り上げて、ベルトルトの意識に操られていると言った。アルミンは身に覚えがあるのだろう、そして……エレンの口から発されたその言葉に……私と同じく……大きな衝撃を受けて、呆然としていた。
そんなアルミンの表情を見て、私は我慢が出来ずにエレンに食いかかった。
「エレン!あなたは何がしたいの?!」
私の問に答えることなく、エレンが語り出したのは…… “アッカーマン一族について” だった。