第212章 悪夢 ※
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そのレストランにエレンは現れた。
――――ずっと会いたかったエレンは……、掌から血を流して……いつでも巨人化できると示したまま……私とアルミン、そしてガビがいた別室に突然、やってきた。そして話がしたいと言う。怪しい動きをしないように両手はテーブルの上に置けと指示され……私達4人はテーブルを囲った。
その時ノックと共に、扉の向こうから聞き覚えのある声がした。
「――――エレン。全員拘束した。ナナさんもだ。先に行くぞ。」
その声はフロックだ。
ナナだけを別で報告したということはきっと……ナナだけを別で拘束するためにエレンが指示を出していたということだ。
――――どこまで行ってもエレンにとってナナは特別なのだと……こんな時にまで胸が詰まるような自分が……嫌だ。
「ああ。」
予定通り運んでいる、と言った表情でエレンは返事をした。
そして話し合いが始まり……、私もアルミンも……ようやくこの場で、これまでのエレンの行動を理解できると思った。
――――けれどエレンが放った言葉は私たちをより攪乱させた。
「俺は自由だ。」
「――――え……?」
「俺が何をしようと、何を選ぼうと……それは俺の自由意志が選択したものだ。」
あくまで全てが自分の意志だと言う。
まるで兵団側も私たちも……エレンがジークに操られていると想定していることを知っているみたいに。エレンの発言が腑に落ちないアルミンが、エレンに問う。
「鉄道開通式の夜にイェレナと密会したよね?その後もエレンの自由意志なの……?」
「そうだ。」
――――違うと言って欲しかった。
信じたんだと、信じたのに騙されて……どうすればいい?助けてくれって……言ってくれたらどんなによかったか。
だって、あなたはこんな人じゃなかったはずで。
私の知ってるエレンは――――……その想いが、思わず口から出ていた。