第212章 悪夢 ※
「エレンに伝えてください。――――あなたがあなたの信じる道を行くのなら、私も私の信じる道を行く。言いなりにはならない、と。」
ナナの言葉にフロックは苛立った表情を見せて……はぁ、と小さくため息をついて銃口を降ろした。
「――――仕方ない。」
そして次の瞬間、そこにいた罪もない……ブラウスさん一家に銃口を向けた。
「!!!」
「別にあなたを言いなりにするのに、あなたを傷付ける方法しかないわけじゃない。――――罪のない民間人を傷付けてまで、逆らいますか?俺達に。」
「――――っ……汚い………!」
ナナは珍しく怒りを露わにしてふるふると戦慄いた。
「綺麗も汚いもない。これは戦争だ。――――おいヴィム、連れて行け。」
「はい。」
「――――いや、放して……!」
「大人しくしてください。」
「――――ナナ………!」
「――――ハンジさん……っ……。」
ヴィムに両腕を後ろ手できつく縛られ、ナナは連れ去られた。最後に私に向けた目は……助けを乞う目じゃない。ナナのことだ。
『私のことはいい。どうか無事で。』
―――とでも、言いたかったのだと思う。