第212章 悪夢 ※
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「フロック?!」
私たちに銃口を向けた人物、それは奇しくも私たちと同じ……背に自由の翼を背負った兵士達。脱走したと聞いた時から、再び相まみえる日は遠くないと思っていたけどでも……まさかこんなに早く接触してくるなんて。
「ハンジ団長。あなたはジークの居場所を知っているはずだ。そこまで道案内をしてもらいます。」
フロックは私に銃口を突き付けている。
その後ろにはもちろんルイーゼや……神妙な面持ちのアイビーもそこにいた。
「……いや我々は君たちと争うつもりはないって兵団からの申し出は届いていないのかい?」
「その申し出は断りました。我々は兵団と交渉しません。」
――――聞く耳ももたないってことか。本当に……この反抗期の若者たちは……。
「………それは、何でかな?」
「エレンの判断です。ピクシス司令は我々に島の命運を委ねるような賭けはしない。我々を道案内する道中でエレンから始祖を奪う算段を立てるのに今頃大忙しでしょう。」
――――やはり一度兵団がエレンを食わせると企てた以上……そこを疑われるのは当然だ……。けれどこのまま彼らの好きにさせてはいけない。
なんとか、懐柔しなくては。
「……妄想が過ぎるよ。……それとも……駐屯兵団内にいるお仲間がそう告げ口してきたのかな?」
「聞けば何でも答えてくれるほど親切な部下に見えますか?あなたの部下ではないと示すべきでしょうか?そうなる前に大人しくご同行願います。」
フロックの合図で私たちは後ろ手に縄をかけられた。
「―――フロック!!お前……っ……、ワインのこと、知ってたよな……?!知ってて……!!お前、何やろうとしてんだよ!!」
後ろ手に縛られてもなおジャンはフロックに食いかかる。フロックは冷めた目でジャンを一瞥した。
そしてその後ろでアイビーとルイーゼが、ぴく、と身体を強張らせた。