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【進撃の巨人】片翼のきみと

第211章 歯車④





――――ブラウスさんと言った……?

このお2人は……サシャの、ご両親……?

私は複雑に目を細めたブラウスさんと……その隣の……サシャとよく似た大きな目をしたご婦人に目をやった。





「ニコロ君。包丁を渡しなさい。」



「!!」





――――だめです、そう……言わなきゃいけないのに……言葉が出なかった。

最愛の娘を殺した者が目の前にいて……どんな、心地なのだろうか。

でも、相手は子どもで……でも確かに自分の愛する者の仇で……。



ニコロさんがブラウスさんに包丁を手渡すと……ブラウスさんは女の子の方へ歩み寄り感情のない冷たい目で彼女を見下ろした。







「そこまでです、ブラウスさん。刃物を置いてください。」







――――誰も何も発せなかったその場で、ブラウスさんを窘めたのはハンジさんだった。





「――――サシャは狩人やった。」



「……はい?」






ブラウスさんは遠い目をして、サシャのことを……語った。






「こめぇ頃から弓を教えて森ん獣を射て殺して食ってきた。それがおれらの生き方やったからや、けど同じ生き方が続けられん時代が来ることはわかっとったからサシャを森から外に行かした……。んで世界は繋がり兵士んなったサシャは……他所ん土地に攻め入り人を撃ち人に撃たれた。結局……森を出たつもりが世界は命ん奪い合いを続ける巨大な森ん中やったんや……。」



「――――………。」






私はその……サシャのお父様の言葉に、聞き入っていた。






「サシャが殺されたんは、森を彷徨ったからやと思っとる。せめて子供達はこの森から出してやらんといかん。そうやないとまた同じところをぐるぐる回るだけやろう……。だから過去の罪や憎しみを背負うのは、我々大人の責任や。」





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