第211章 歯車④
なんとかその夜明けは訪れて……薄く太陽の光が夜の闇を溶かして辺りを白く染め始めた早朝に、兵団幹部は議会を開いた。そこで一晩かけて収集された情報が共有される。
この国の発展に大きく力を貸してくれた……キヨミ・アズマビトも含めて。
「フロック・フォルスターを含め100名余りの兵士が降りの中から底を監視する看守ごと姿を消した。そのすべての兵がエレンの脱獄と同時に離反を開始とみられる。総統の殺害も奴らの仕業とみて間違いない。奴ら……では困るな……。」
ナイルが情報を元にエレンを中心とした今回の動きを見せた一派のことを、 “反兵団破壊工作組織、イェーガー派”と呼称した。
「……イェーガー派の目的は……ハンジ、わかるか。」
「ジークとエレンの接触を果たすことがすべてだろう。そしてエレンを中心とした兵団組織への変革。総統の殺害は彼らの強い意志を示している。」
民間にエレンの情報を流したのにも意図があって……ただ兵団に対して民衆の不信を抱かせるためだけじゃなく、エレンをこの国の象徴として担ぎ上げ、組織の頭をすげ替えることだ。
その思惑の片鱗は確かに……フロックが頑なにこのパラディ島のことを “新生エルディア帝国” と呼称していたことでも彼の意志が強いと見える。
「しかし…イェーガー派はなぜ短期間でここまで連携できた?エレンを担ぐってことは多くの兵士があのジークの後ろ盾を信用しているってことだぞ?」
ローグの問は的を射てる……が、その目で外の世界を見ていない者と……見て来た者が抱く危機感の度合いの違いは言葉にしても伝わらないだろうと思った。
――――なぜなら昨夜も104期の面々と話していて感じた。
私も含め……イェーガー派に属するつもりは毛頭ないにしろ、離反する兵士たちの気持ちも、わかるからだ。