第211章 歯車④
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エレンが脱走したという報せがあってから……兵団内は混乱を極めた。
この島の生き残りを左右する兄弟のうち、最初から真意が読めずほぼ黒に近く何かを画策していた兄のジーク……そして我々の仲間であり、同じ志であると信じていたはずのエレンの……不可解な行動。
レベリオ強襲を扇動したことから兵団に疑念を抱かせ、そして――――……兵団は早くからエレンを切り捨て……兵団に従順な兵士を巨人化させてエレンを食わせることで、始祖の巨人を押さえるつもりだった。
その情報をどこかから入手していたフロック・イェレナを介して、エレンは動き出した。
「なんで……エレンは……何を、考えているの……?」
情報が集まるまでの間、束の間の休息をとるために私たちに与えられた部屋の一室で、ミカサは頭を抱えて呟いた。
「――――これはナナが、アイビーから引き出した情報なんだが……。」
私がその事実を知らせると、そこにいた104期の面々は驚愕の顔を見せた。
「――――兵団がそのつもりなら……エレンが脱走するのは当たり前じゃないですか……!」
ジャンが怒りに声を震わせた。
「そうだね……。私たちは疑心暗鬼に陥って……時間を浪費するばかりだった……。マーレや連合国から攻撃を受けると言う面でも……ジークの任期が迫っているという面でも我々より数段……あの兄弟は危機感を持って動いていたとしたら……我々に愛想を尽かすのも、頷ける。」
「――――………。」