第210章 歯車③
ニコロのレストランに赴くため、ナナが私たちの元を経った。
私は軟禁されているオニャンコポンを尋ね、イェレナの真意をどれほど知っているのかを……尋ねた。
オニャンコポンの様子からは……どうやら、イェレナがエレンと密会していたことは知らなかったように見える。しかもその表情からは……まるで “彼女ならやりかねない” とでも言っているようで、私はそこを更に問いただした。
その中で語られたこれまでの義勇兵たちの歩みの中で……不自然な点に気付く。
「―――疑いの目を向けただけで躊躇いなく仲間の頭を吹っ飛ばす……。そんなことを続けて来た彼女が、なぜ……マーレ人捕虜の待遇にあんなにも気を遣う……?」
兵団にかけ合ってまで、マーレ人の人権……働く環境を整備し、この島の中である程度の自由度を持って過ごせるように手を回した。
「――――……よし。私について来てくれオニャンコポン。」
「え、ここから出るってことですか……?何か嫌なんですが……。」
嫌がるオニャンコポンを連れて、私たちもナナを追ってニコロのレストランに向かう。
――――その道中でだった。
街中にビラが舞っていて………その紙切れにはこう、書いてあった。
“兵団トップ、ダリス・ザックレー総統がテロにより死亡。民衆の怒りが天に届いたか”
「――――な、んだ……これは………!」
「ハンジさん……、何が、起こってるんですか……?」
同じくビラに目を落とし、動揺したオニャンコポンが口を開いた。
「――――とにかく緊急招集がかかるはずだ。急ごう、王都の兵団本部へ。」
休むことなく馬を走らせ……、招集に参じたのは夜。
そこにはアルミンやミカサの姿もあった。そうか、打診し続けたザックレー総統にかけ合う時間を貰えたのは、今日だったのか。
一室に集められた兵団関係者の中で、憲兵団のローグが調査資料を基に今回の経緯を話した。